SLAP(スラップ)損傷とは
SLAP損傷とは、肩関節の二頭筋長頭腱(ちょうとうけん)が付着する部位に損傷が生じた状態を指します。SLAPは、Superior Labrum Anterior to Posteriorの略で、日本語では「上方関節唇の前部から後部の損傷」と訳されます。
肩関節の上側には、二頭筋長頭腱が付着しています。この付着部には、肩関節を安定させるために、環状の軟骨組織である「関節唇(かんせつしん)」が存在します。
SLAP損傷は、この唇部分が損傷を受けることを指し、肩関節の安定性に問題が生じることがあります。
SLAP損傷の症状
投球動作のコッキング期で肩関節後方の疼痛や引っかかり。その他不安定感、力の低下、肩関節の可動域の制限などがあります。
SLAP損傷の原因
SLAP損傷は、スポーツなどの肩関節に負担がかかる動作を繰り返したり、急激な力が加わったりすることで発生することが多く、野球投手やテニスプレーヤーなどのスポーツ選手に多く見られます。
また、転倒や急激に引っ張られたり、肩関節の老化によっても発生することもあります。
スポーツ障害の場合、肩関節後方の硬さや肩甲骨可動域の低下、胸郭の機能低下、腱板(肩の周りについている筋肉)の弱化が原因で発症します。
肩甲胸郭の機能が低下している状態(特に肩甲骨を内側に寄せる機能が低下している状態)や肘下がり、体の開きが早い投球フォームでは、肩を必要以上に後ろ側、外側に広げるために、肩の後上方で腱板と関節唇がぶつかり、損傷します。
また、投球動作の度に二頭筋の牽引力が働き、関節唇は二頭筋と一緒に肩甲骨から剥離し、しばしば腱板断裂を合併します。
SLAP損傷の検査
MRI等の画像検査で確定します。徒手検査では
1)Anterior Slide Test(前方スライドテスト)
2)Yergason Test(ヤーガソンテスト
3)Compression Rotation Test(圧迫回旋テスト)
4)Pain Provocation Test(痛み誘発テスト)
5)Anterior Apprehension Test(前方不安定感テスト)
6)Biceps Load II Test(上腕二頭筋負荷テスト II)
SLAP損傷へのアプローチ法
治療方法は、損傷の程度や症状によって異なりますが、早期に適切な治療を行うことが、完全な回復につながることが多いです。損傷のフェーズにより異なります。
保存治療では肩の内旋と水平内転の柔軟性獲得が大切になります。
症状が重い場合には手術する必要があります。